支部長コラム 「財産」

2008年2月発行の道場新聞港南瓦版に掲載

極真空手の素晴らしさは、''創始者・大山倍達総裁が
生涯を懸けての壮絶な修行から悟った理念にある''と思う。

その理念を表す数え切れないほどの
「大山倍達語録」の中に次のようなものがある。

『君たちは自分の外にばかり財産を築こうとせず、
自分の中に財産を築きなさい。

自分の外に築いた財産は人に盗られるが、
中に築いた財産を他人は絶対に奪うことが出来ない』

では自分の中の財産とはどの様なものだろうか…。

昨今、ビデオやインターネットで理屈や方法を、
手軽に、そして大量に手に入れることが出来る。

学校の教師は惜しげもなく答えや結論を示してくれるし、
道場の指導者も親切に教えてくれる。

しかしそれらを「知った」ところで、
それらはまだ自分の外に存在しているものに過ぎない。

決してそうした学びがいけないと言う訳ではなく、
「知った」ことを知識で終わらせず
身をもって体験してみることが必要だ。

体験を通じて失敗や間違い、遠回りや苦悩というものを経る。

このことによって、
初めて知識は自分の中に築かれる財産へと変わって行く。

例えば、一流の水泳コーチに1年間泳ぎ方の基礎や心得の講義をしてもらっても、
実際に水に入り、ときには溺れそうな体験をしなければ、
決して泳げるようにはならない。

また、「子孫に美田を残すな」と諺にもある通り、
親の役目は自分の子供に金銭で財産を残すことではなく、
子供自身の中に『生きる力』
即ち努力を継続する力・人生を切り開く力などを築かせることだと思う。

財産について大山総裁は
『 私が死んで沢山お金を残していたら私の墓に小便をかけなさい 』
とも言っていた。

現に「世界の大山倍達」が残した金銭は、
一般人のそれと大差ないものだったと伝え聞いている。

その代わり我々弟子に「極真会館」という大きな財産を残してくれたのだ。

まさに有言実行、「昭和の武蔵」だったと思う。

『武の道においては真の極意は体験にあり、よって体験を恐れるべからず』



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