支部長コラム 「捨てる」

2009年5月発行の道場新聞港南瓦版に掲載

お金さえ出せば容易に何でも手に入る現代の日本。
環境問題への意識の高まりも相まって、
物を買うことよりも物を捨てることの方が難しくなって来ている。

そのことは形ある物に限らず、情報についても言えることだ。

昨今の超情報化社会では、
黙っていても情報が洪水のように押し寄せてくる。

それが有益な情報であろうと、
ゴミのような情報であろうと、
お構いなしに・・。

その中から情報を取捨選択すること、
つまりいかに「情報を捨てる」ことが出来るかが
現代人の重要な能力の一つである。

現代における勉強とは情報を上手に選び、
的確に捨てることを学んでいる側面が大きいように思う。

空手での技の修練の過程でも、
初級・中級者は動き方や力の入れ方を学ぶことが
主な取組み方である。

それが上級者になるにつれ、
動きの無駄を省き、余分な力を省くことに意識が移って行く。

このいわゆる「捨てる過程」が最も難しいと同時に、
物ごとの本質に触れることの出来る非常に面白い過程でもある。

初心者には是非そこまで稽古を積んで行ってもらいたいものだ。

仏教でいう「悟りを開く」とは、
物やこだわりを捨てて捨てて、
捨てきったその先にあると言われている。

よく言う「~~バカ」「バカになれ」というのは
邪心を捨てた状態だと私は理解している。

何事においても「己(おのれ)を捨てる」ことが出来る人間は強い、
そしてそれが出来ないで葛藤の中にいる者が多い、私を含めて・・。



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