支部長コラム 「非安定」

2010年11月発行の道場新聞「港南瓦版」に掲載

ある冊子で「非安定」という言葉に出会った。

「人間は言葉で出来ている」と言った人もいるほど、
新たな言葉との出会いは、
自身がアップデートされて行くようで、
実にワクワクと胸がときめくものだ。

この「非安定」という概念は、
二足歩行ロボットの研究開発で用いられるらしい。
実は人間も「非安定」の領域で生きているという。

二足歩行の場合、不安定では当然倒れてしまうが、
安定していても足は前に踏み出せない。
非安定だからこそ前進出来るそうだ。

生き方や物事への取り組み方においても同様で、
不安定は論外だが、安定してしまっても前には進めない。

「安定」を言い替えれば「停滞」となる。
居心地が良いかも知れないが、その中から新しいものは生まれない。

昨今の社会でも「安定の時代は終わった」という話をよく耳にする。

前に進むには意識的に安定を崩し、
その変化の中からワンランク上の新たな安定を求めて
挑戦と努力しなければならない。

武術においても足が「居着く」ことは良くないとされている。

年齢を重ねても、どんな立場に置かれようとも、
腰に締めた帯が何色になっても、
そこに居着くことなく「非安定」であり続け、
前を見て挑戦して行きたい。



「>>>支部長コラム」のトップページへ