支部長コラム 「武道と礼節」

2005年2月発行の道場新聞港南瓦版に掲載

「そもそもどうして武道は他のスポーツに比べて礼節に厳しいのか?」
こんなことを考えたことがあるのは私だけではないだろう。

武道とスポーツが違うということは、
極真空手に携わる者であれば常識のはずだろう。

武道の礼節・作法の由来は武士が自らの命を守るための
必要性から生まれたと言われているが、
現代に生きる武道家にとっての礼節の意義とは何なのか?

についても考えてみる必要があると思う。

道場の稽古ではお互いの体を直接叩いたり蹴ったりしている。

もちろん憎しみ合っているわけでも喧嘩しているわけではなく、
両者同意の上でお互いを高め合うために身体を提供し合っているのだ。

そうであるとしても、相手には当然親も居れば家族もいる。

悪意は無いにしても、
その「家族の大切な宝物」の身体を
叩いて蹴っていることを忘れてはならない。

自分の大切な子供や親・兄弟が誰かに殴られていることを想像したら、
お互い了解のもとであっても、冷静な気持ちではいられない筈である。

であるから、武道を志す者は他のスポーツマン以上に人を敬い、
思いやる崇高な気持ちで稽古に臨まなければならないのである。

まして、悪意をもって組手をする者は道着を着る資格がないと思う。

空手の技を身に付けることは、
素手でありながら武器や刃物を持つことに等しく、
それを正しく使えない者は持つ(技を身に付ける)べきではない。

包丁も正しく使えば美味しい料理を作る道具となるが、
使い方を誤ると人を傷つける凶器になる。

「武士の刀は常に手入れをし、鞘にしまっておき滅多やたらに抜かない」
と言わる通り、我々空手家にも同様の心がけが必要ではないだろうか。 


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